レッスンでは、ソルフェージュ、ピアノに関わらず「読譜力」をつけることにウェイトを置いています。ここで言う「読譜力」というのは、楽譜を見て、その曲の性格、拍子、調、テンポ、強弱、フレーズ、ハーモニー、音のニュアンスや流れなどを総合的に感じとる能力のこと。
「楽譜は読めます」と言ってはいても、拍や拍子を感じていないために難しいパッセージになるとテンポを遅くし、弾きやすい箇所になるとテンポを戻したり、同型リズムの反復進行などで1拍多くなったり足りなくなったり、フレーズの途中とんでもない箇所でブレスをとったり…といった状況によく出会いますが、読めたつもりになっていても、それぞれの音符を文脈(音楽の流れ)の中で捉えられておらず、また、生きた音楽を感じるための基礎となる「拍や拍子を感じる」ことが疎かになってしまっている生徒が意外と多いのです。
その対策として、しっかりとした拍感をつかめるまではリズム教材に多く時間を割いたり、ガロンなど音楽的にも魅力のある教材を歌うことでフレーズ感や音楽の構成力を身につけてもらったりしています。その際、階名や母音唱だけでなく、簡単な英語やドイツ語などの歌詞をつけて歌ってもらうこともあります。これは、子音だけの音が存在しない日本語に慣れているとどうしても歌う時に音楽の流れを感じにくく停滞してしまいがちなので、流れを生みやすい言語をつけて歌うことでリズムの躍動感や音楽の流れを身につけてもらうためです。
また先日は、HASCL主催の「演奏のための楽譜解釈セミナー」に生徒とともに参加してきました。「楽譜の読み方」を再考するこのシリーズは、楽譜を創造的に読んで音楽づくりをしていく方法を簡単に紹介してもらいながら参加者たちで議論し再認識しあう実践的なもので、演奏家やレスナーに限られた専門的な場というよりも、生徒でも親しみやすく意見も出しやすい雰囲気でした。(今まで具体的な根拠を持たず何となく曲を弾いてきた演奏家やレスナーたちに特に参加をオススメしたいセミナーです!)
また、もう1つ心掛けているのは、レッスン前に生徒と話す時間も大切にすること。週1回レッスンをしている生徒がほとんどなのですが、聴いた曲や観た絵画、映画、出かけたコンサート、その他何でも、レッスンに来るまでの1週間で体験した作品や事柄とその感想を毎回話してもらっています。これは、音楽やその他の物事をもっと意識的に体験してもらうためであったり、音楽以外のことにも目を向け柔軟な発想や感性を育んでもらうためであったりするのですが、例えば「今までCDのライナーノーツなんて読んだことがありません」と言っていた生徒が作曲家や作品、その時代背景について調べてくるようになったり、同じ曲でもいろんな人の演奏を聴いて「何となく違うと思います」で終わっていた生徒が、どこがどんな風に違うのか、さらにそれは演奏者がどのように解釈しているからか、などを考えてくるようになったり、効果抜群でもあり、また、私も知らない作品や思いがけない感じ方に出会えるとても楽しみな時間です! |