私は普段のレッスンのとき、生徒さんに前述の何を表現したいのかを忘れないでいてもらうために、また、私自身が生徒さんからいい刺激をもらうために『ごっこ遊び』をしてもらっています。
きっと誰でも小さいときには「おままごと」や「ヒーローごっこ」をして「今、自分は○○なんだ!(ex.お城に住むお姫様なんだ!)」という状況を空想して遊んだことがあると思うのですが、今回ここで言う『ごっこ遊び』は、もうちょっと大人の視点で(笑)視点は音楽に向け、具体的には、演奏する曲に対してテーマ性を持ち、イメージを自分の中で具現化してもらうということです。
たとえば歌関係のレッスンなら(どのジャンルの歌でも)まず歌詞を読んでもらってます。それも出来るだけ感情をこめて読んでもらいます。
次に歌詞の細かい状況設定を教えてもらいます。たとえば「この街は♪」という歌詞(もちろんそれが外国語の歌詞だったとしても)が出てきたとしたら「国のイメージは?」「周りはどんな風景?」「歌詞の中の主人公は今どんなシチュエーション?」etcといった具合にです。また、史実がハッキリした状況の曲ならば、生徒さんが作ったイメージの横軸に、さらに現実の歴史の縦軸を織り交ぜていって、より個々のキャラクター像をハッキリさせてもらってます。もちろん完璧に史実に沿ったキャラじゃなくてもかまいません。あくまでも生徒さんのイメージするオリジナルのキャラでかまいませんし、そのほうが同じ曲でも個性が出てより音楽が楽しくなります。
ちょっと漫画家の方たちの作業にも似ていますね。実はこれはお芝居で演技をするときなど、役者さんにはおなじみの作業なのですが(いわゆる0(ゼロ)幕作り)、歌詞の世界観や内容を歌にして(音楽を奏でて)、自分の気持ちを聴衆(お客さん)に聴いてもらう・・・というのは、お芝居の形態に通ずるところがあるような気がします。
そして私たち声楽家・ミュージシャンはメッセージを届ける手段として、セリフだけではなく音の力もあわせて借りることが出来るんですね。ですから、キャラクター作りが出来て余裕のある生徒さんには、次に楽譜を見て「何でこんな音楽構成なんだろう?」って考えてもらいます。
とは言っても専門的なスコアリーディングじゃなくていいんです。「音がここで高低・強弱してる。きっと○○○な気持ちをあわらしたいんじゃない?」「サビに同じメロディー(フレーズ)が何回も出てる。一番訴えたいところなんだろうな」・・・くらいの簡単な『起承転結』でかまいません。
まず、こうしたお遊び的な作業から、ひとつの大きな曲の流れを自分なりに感じてもらい、そこから演奏テクニックなどの細かいディティールに入っていくようにしています。 |