私のヴァイオリンとの出会いは、4歳のときに父親の赴任先であるスイスのジュネーブで受けた、スイスロマンド管弦楽団の日本人団員、大野氏のレッスンでした。
小さかった私は、先生の仰ることをなかなかきかず、時には泣いたりもしましたが、レッスンの時に聴かせてくださる先生の名演や、「僕は決して叱りません」という優しい笑顔に、毎回のレッスンは次第に楽しみなものになっていきました。
帰国のために大野先生のレッスンは3年間で終わってしまいましたが、この時期に受けた楽しいレッスンは、その後のヴァイオリン人生を支えるものとなりました。
日本に帰国してからも、父親の転勤の度に生活する場所も何もかも変わっていきましたが、常にそばにあったのがヴァイオリンでした。そして、新たに出会うすべての先生に素敵なエッセンスをいただきました。
しかし、ひとつの楽器を極めていくのは時にシビアなことであり、また「自分にとって本当の音楽とは何だろうか、音楽が世の中にある意味は何だろうか」と考え、孤独に陥るときがあります。
そんな時は、ある恩師の「あなたの音楽を皆さんに聴かせない。あなたのテクニックを築き上げなさい」という言葉を思い出します。そうすると、「私の音楽を、テクニックを築いていこう」と素直な気持ちになれるのです。
さまざまな土地で出会った恩師のおかげで、現在まで音楽活動を続けてくることができました。生徒さんには、「今日はここの音が出た」などささいなことでも構いません、人生の喜びを音楽の中からも見つけてほしいと思っています。そして私が恩師から学んだように、「私らしい」音楽を創っていく喜びをお伝えできたら幸いです。 |